明日が手術だという夜、病室でぼけーっとカレンダーを見ていたら、
同室のおじさんに声をかけられました。
おじさんは、2・3日前に手術をしたようで。個室から移ってきたところでした。
大きな手術のようでした。
って云うか、僕の腹腔鏡手術なんてのは、この病院では、最も簡単な手術ですから、
僕から見れば、他は全て大きな手術です。
「お兄さん、手術なんてのは、寝てる間に終わるから、何の心配も無いよ」
僕がぼけーっとしていたのが、思い悩んでいるように見えたみたいです。
そう言えば、さっき、看護師さんも、
「眠れなかったら、遠慮なく言ってくださいね」って言ってました。
たぶん、睡眠導入剤か何かを処方してくれるんだと思います。
でも、不思議と不安はありませんでした。
そりゃそうですよね。
ガン細胞を抱えて暮す方がよっぽど不安です。
それを明日は切除してくれると云うのですから。
ガン患者にとって、手術が出来ると云うことは、幸運なことです。
転移とか、血糖値が高いとか、肝臓や腎臓に慢性疾患があるとしてもらえません。
手術と云っても、その場しのぎのものもあります。
治癒を目指す手術が出来るというのは、幸せなことです。
「手術の時は、頑張るのは僕たち、患者さんは寝てるだけ。」
執刀を担当するお医者さんは言ってました。
ちょっと、オタクが入った感じの若いお医者さんです。
腹腔鏡手術は、モニターを見ながら、マニピュレーターを操作します。
コントローラーに僕の体温が伝わることはありません。
でも、テレビゲームとか得意そうですから、きっと上手くやってくれたと思います。
手術は、本当に寝てる間に終わってました。
手術室で点滴をつながれて、酸素マスクを着けた時、咳き込んだのが最後の記憶で、
眠いのに無理やり起こされて、しっかり息を吸ってと言われたのが、最初の記憶です。
その間に何があったかなんて、全く分からなかったし、夢も見ませんでした。
S字結腸を取り除いて下行結腸と直腸を繋いだように、
午前九時と午後零時を繋いだのです。
手術中の3時間は、僕にとっては切除された時間です。
あれから2年経ちました。
手術の痕も、ほとんど分からないくらいです。
50年前のヘルニアの手術痕の方がよっぽど目立ちます。
7階西病棟での生活が、随分昔のような気がします。
不思議と懐かしい思い出になっています。
先日、主治医の先生から電話がありました。
ポリープの中に癌があったそうです。
一年前は、何も無かったところに15mmのポリープが出来ていました。
20mm以上あったら、再手術になったかもしれません。
そのポリープが癌化していたというのは、想定の範囲内とはいえ
気分の良い話ではありません。
ギリギリのところで生かされているんだと云うことを、改めて感じた次第です。
そして、まだ終わったわけでは無いんだと云うことも。
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